【新・ニラ醤油麹日記(第9話・不測の事態)】
ところで、「らんらん」という人間についてだが、この輩、意外にポンコツである。いや、そのポンコツさに、そもそも意外性などないのかもしれない。
買い物の時のように、妙に慎重で繊細かと思いきや、こと料理に関しては、「臨機応変さ」「大胆不敵」などと称して、ひどくいい加減なところもあり、実のところ、精密な機械のようでいて、その肝心なネジが1本抜けているようなポンコツ人間なのだ。
いつものことながら、今回のニラ醤油麹についても、その悪癖が出てしまった。

昨日、仕込みをした時のこと、充分あると思っていた醤油が、ほんの僅か足りなかった。しかし、まぁ明日にでも追い醤油すればいいや、と、その日は醤油を調達しなかった。
そして逆に、なんとか瓶に収まるだろうと思っていた麹は、ほんの僅か多かった。しかし、ちょっとばかり残るのも面倒だし、と、無理やり瓶の蓋スレスレまで詰め入れた。

なんてことはない、いつもの失敗ともいえぬような些細な出来事だ。それが一体、何の影響があるというのか…、ポンコツが気に留めるほどのことでもなかった。

なにはともあれ、2日目の夕方、調達した醤油を手に帰宅したらんらんは、期待に胸を膨らませ、「早く瓶の中をかき混ぜたい！」と宮崎さんと高知さんの元へ急いだ。そして、その姿を見て驚いた。

「あれ？昨日と全然変わってへんやん…」