【新・ニラ醤油麹日記(第15話・覚悟の朝)】 完成ならば、宮崎さんも高知さんも、早く冷蔵庫で休ませなければいけない。それを確かめるには匂いを嗅ぐしかない。 「今日こそは!」 八日目の朝、らんらんは覚悟を決めた。 おそらく問題ない宮崎さんは後にして、気がしっかりしているうちに、高知さんから、瓶の蓋を開
【新・ニラ醤油麹日記(第14話・高知さんに起きていること)】 6日目、7日目と、急激に目に見える発酵が進んだ。完成はもうそろそろかもしれない。 だが、先日の憂いから、実のところ、この2日間、らんらんは高知さんの匂いを嗅いでいなかった。怖かったのだ。 「もしかして腐ったんちゃうやろな?」 そんな口
【新・ニラ醤油麹日記(第13話・兆し)】 らんらんの願いが届いたのか、はたまた昨日、思いを込めるあまりかき混ぜすぎたのか…、5日目、宮崎さんと高知さんの麹が心なしか崩れているように思えた。 瓶の蓋を開けてまずは宮崎さんをかき混ぜる。少し甘いような穏やかで柔らかな香り…。 やはり順調なようだ。気温はも
【新・ニラ醤油麹日記(第12話・いつか来るその日のために)】 3日目、4日目…と沈黙を続ける宮崎さんと高知さんに、らんらんはいささか焦りを覚え始めていた。 いつ完成するとも知れない宮崎さんと高知さんの遅々とした発酵とは裏腹に、これまで毎日のように、食卓を支えて続けてくれたネギ塩麹は着々と消費されてい
【新・ニラ醤油麹日記(第11話・嘆きのらんらん:後編)】 らんらんは、カインズDIY squareに於いて、目下、ランクアップを目指して爆進中である。いつかは儚く消えてしまう、宮崎さんと高知さんとの美しき思い出の日々を綴る理由の一つが、そのポイントをGETするためだ。 しかしながら、その観点から見る
【新・ニラ醤油麹日記(第10話・嘆きのらんらん:前編)】 「経験値」というのは時には仇となる。 瓶にさえ詰めれば、あとはもう呆気ないくらいに早い…、そう思っていた。 まさにネギ塩麹がそうだった。仕込んだ翌日には麹が潰れて嵩が減り、翌々日には完成していたのだ。 しかし、宮崎さんと高知さんときたら、なん
【新・ニラ醤油麹日記(第9話・不測の事態)】 ところで、「らんらん」という人間についてだが、この輩、意外にポンコツである。いや、そのポンコツさに、そもそも意外性などないのかもしれない。 買い物の時のように、妙に慎重で繊細かと思いきや、こと料理に関しては、「臨機応変さ」「大胆不敵」などと称して、ひどく
【新・醤油麹日記(第8話・宮崎さんと高知さん)】 出身地の異なる2種類のニラを切り終えて、らんらんは思った。 やはり違う。それぞれに個性がある。 宮崎産は水分が少なくサクサクと切りやすい。そして1本1本が綺麗に揃っていてまとまりやすく、トッ◯バリュというブランドのためか、全体的に品良くバランスがとれ
【新・ニラ醤油麹日記(第7話・出身地)】 「え?これ、パッケージちゃうやん。 宮崎県産と高知県産⁇」 お店のワゴンにあった時、らんらんがパッケージの文字を確認したのは宮崎県産の方で、おそらく高知県産の方は値札が見えやすいようにパッケージが裏か横を向いていたのだと思う。 それにしてもだ。まばゆいニラの
【新・ニラ醤油麹日記(第6話・二つの瓶:後編】 この世に起こることは全て必然であり、偶然など何一つない。 あの日、ニラがなかったことも、ネギ塩麹で瓶が塞がっていたことも、そして、そのために瓶が二つになってしまったことも、全ては予定調和という人知を超えた、大いなる流れの中で起きていることなのだ。 そん